演出家ブリュノ・メサ氏の『なに どこ』の演出。 昨日(12/3)に行われたベケット・ワークショップの発表会はとても面白かった。その後行われた、演出家二人(途中で俳優達も)と観客の質疑応答(ポスト・トーク)も中身の濃いものだったように思う。 二様の『カタストロフィ』については、また、東京日仏学院で上演されるので、また後で触れることにし、ブリュノ・メサ氏の『なに どこ』の演出について興味深く思ったことを書いておこうと思う。 ベケットのテキスト(戯曲)では、『なに どこ』という劇は、舞台下手前面の(人物たちの頭の高さにある)スピーカー(V:バムの声)にライトが当たって、Vが「おれたちは最後の五人だ。」という台詞で劇が始まる。(引用の邦訳は高橋康也訳によるもの。) General dark. 舞台全体が暗闇。. Light on V. Ⅴにライ卜。 Pause. 間。 V We are the last five. Ⅴ おれたちは最後の五人だ。 In the present as were we still. いつもそうだったがいまもだ。 フランスの演出家ブリュノ・メサ氏は、その前に登場人物たちが、舞台上に部分照明によって区画される演技空間(P)の背後で、皆一様な灰色の長い髪、そのウィッグ(鬘:かつら)を一人ずつ着けるところから観客に見せていたから、そこから劇を始めたのだろうと思う。 ふと、能楽の『翁』の面(おもて)の扱いを知っていて、意識的に表現した演出かな?と思った。 例えば、マイクロソフト・エンカルタ百科事典の翁面の説明では、 【白式尉(はくしきじょう) 天下泰平と国土安穏をいのる神聖な曲「翁(おきな)」の専用面。素顔で登場した役者が舞台で面をかけるのはほかに例がない。】とある。(下線:太字表記は引用者による)